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34 小笠原に行ってきた(2)

小笠原父島

 「もしもし、小笠原村役場の方ですか?

私は観光船『ふじ丸』に乗船しているミュージシャンで、芳晴と申します。

もし迷惑でなかったら、学校や老人ホームで演奏させていただけませんか?」

僕は計画性のなさと言ったら、誰にも負けない自信がある。

「思い立ったら行動」と言ったら聞こえはいいが、先のことをあれこれ考えるのが苦手なのだ。

だって、先のことを考えたら、その時になって気が変わるかもしれないじゃないか(笑)

役場の人はしばらく相談していたが、

「申し訳ありません。何分急なもので…こちらとしては対応いたしかねます」

「わかりました。お忙しいところ、すみませんでした」

しかし、これくらいであきらめてはいけないのであった(笑)

船からは「通船」というボートが1時間おきくらいに出ている。

いよいよ上陸だ。

島の男たちが、船から降りて上陸するお客さんたちの手を引っ張りあげてくれる。

お姫様ってこんな気分なのか、としばし感慨にふける(笑)

さあ、ここにどんな足跡を記そうか。 

父島の波止場

音響の桜井さんたちがバイクに乗っていた。

「いいですね、それ!」

僕もバイクに乗ることにした。 

貸しバイク屋はタクシー会社も兼ねている。

若い店員は、僕の目の前に原付バイクを出してきた。

「6時間だと1800円です。あと保険が300円。バイク、乗ったことありますよね?」

「ああ、大丈夫です」

僕はバイクのエンジンを回して、そろそろと走り出した。 

なんて爽快なんだ!

太平洋の風を体に受けて走るバイク以上に、楽しいものがあるだろうか。

気持ちは一気に10代のころに戻った。「おっと安全運転、安全運転」 

バイクは海沿いの道をひた走る。

途中でヤギや、緑のトカゲに出会った。 

「小港」という場所で、音響のスタッフさんたちに出会う。

「お、ニコさん、楽器持ってるで。ここで弾いて~」

(俺はニコさんかよ)

音響のスタッフさんたちはみんな関西人。やたらノリがいい。

大きなガジュマルの樹の下で、意味の分からないミニライブをすることに(笑) 

小笠原5

みんなと別れて、僕は山の上に向かうことにした。

「夜明山」

山の上の何箇所かに、旧日本軍のトーチカのようなものがあった。

樹の生い茂る中、このようなものに出くわしたときは、怖がっている暇などない。

中へ入ってみた。薄暗い中に浮かんできたのは、落書きだらけのコンクリートの壁。

思い空気と、エコーたっぷりの音響効果。

実際にここで戦闘があったわけではないはずだが、戦跡というものは独特な存在感と、ある種の悲しみをたたえている。

この島はもともと無人島だったが、19世紀に欧米系やハワイ系の移民がやってきた。

その人たちは明治以降、帰化して日本人になったが、太平洋戦争で本土に疎開。

敗戦後はアメリカの統治が1968年まで続いた。その際、欧米系住民だけは島に帰ってくることを許された。

アメリカの軍政による英語教育で、欧米系住民の若い人たちは日本語がしゃべれず、返還後はアメリカに移住した人も多いそうだ。

そういえば、島に上がったとき、魚釣りをしていた若夫婦や、庭で涼んでいた上半身裸のおじさんは、白人の顔をしていた。

歴史の荒波の中で生きてきた人たち。

とりわけ、僕はこの「欧米系住民」と交流してみたいとひそかに思っていたが、あまりに時間がなかった。

うん、又の機会にとっておこう。

このときの体験をもとに、僕は帰ってから「シャールの冒険」の続編を書いた。

小笠原6

山から下りてしばらく走ると、「小笠原村地域福祉センター」という建物の前を通りかかった。

「よし、ここだ!」

僕はバイクを止めて、中に入り、女性職員に声をかけた。

「すみません、僕は観光船で来ているミュージシャンです。子供たちやお年寄りと交流したいのです。よかったら、少し演奏させてもらえませんか?」 

彼女と上司はしばらく相談していたが、

「では、こちらへどうぞ」と言って案内された奥には、デイサービスの老人施設があった。

そこで数人のお年寄りが待っていた。 

「突然無理言ってすみません… よかったら一緒に歌でも歌いましょう」

「月の沙漠」とか「蘇州夜曲」とか、思いつくままに二胡で歌う。

さすが、人生の先輩たちは、このような展開も喜んで受け入れてくれているようだ。

僕は調子に乗って、モンゴル民話「スーホの白い馬」の弾き語りをやった。

二胡のチューニングを変えてからというもの、初心者に戻った気持ちの僕は、皆さんの胸を借りるような気持であった。

みんな神妙な面持ちで聴いていた。

「子供に帰ったみたいだねえ」

最後に、そこにあったピアノで何か歌った(何を歌ったか、残念ながら覚えていない。でもハ長調であることは確かだ。それしか弾けないから) 

お年寄りの中で、男性でひときわ笑顔の素敵な方がいた。何とも魅力的な「南国のダンディ」のような人だった。

「あなたは声がいいねえ…今日は突然だったから何もないが、今度また来てくれるときは、お土産を用意しておくからね」と言ってくれた。

僕が年を取ったら、こんな包容力のあるおじいさんになれるだろうか。

「また来ますよ!それまでお元気でね!」

小笠原7

「ヨッシー、今どこにいるの?もうすぐ乗船だよ」

祥子&ラディッシュのマークさんから電話だ。

いつでもマイペースの僕が、島に置き去りにされやしないかと心配しているのだ。

「OK,すぐ行くから!」

しかし、僕は島に来てから何も食べていなかった。

「ハートロックカフェ」(ハードロックカフェではない)に入って「サメバーガー」を食べた。

「うん、なかなかうまい」柔らかく、普通の魚フライのようだった。

ああ、乗船の時間がせまっている!

小笠原8

波止場では、最終の通船が出発しようとしていた。

「部屋番号は? はい、こちらでお待ちください」 

港は今、夕焼け色に染まっていた。海辺で遊ぶ子供たちは、やがてそれぞれの家へ帰っていくのだろう。

君たちにとっては、ここが故郷なんだね。僕も帰ろう。

「ありがとう、小笠原」

船が大きな汽笛を鳴らし、ふじ丸は走り出す。

島の船が、競って沖まで僕たちを見送ってくれる姿は壮観だ。

最後の船が、やがて島へ帰っていくのと同時に、僕は反対側の水平線を見た。

大きな夕日が太平洋に溶けていく。 

ふと、デッキの下の階をみると、大勢の乗客にまぎれて、祥子ちゃんがこちらを見て笑っている。

なんて素敵な笑顔!

そう、明日は「祥子&ラディッシュ」のメインコンサートだ。船酔い、大丈夫?

次回はいよいよ「小笠原に行ってきた」最終回!

 

小笠原9

 

◇◆芳晴ライブ情報◆◇

     2012年4月28日(土) 芳晴ソロライブ @八王子ふらっとん

毎月最終土曜日はふらっとんライブです。リクエスト、飛び入りも大歓迎!

【出演】:芳晴(歌、二胡、ギター、他)

【時間】①19:30 ② 21:00

【料金】Table Charge ¥500

    Live Charge ¥1000

【場所】ライブ酒場ふらっとん

東京都八王子市横山町8-9セイシンビルⅡB1

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     2012年5月5日(土)銚子・妙福寺 「吟遊詩人 芳晴コンサート」

昨年に続き、銚子・妙福寺での震災復興チャリティーコンサート。

藤の花が咲き誇る境内で、復興への思いを新たに…

 

【出演】 芳晴 (歌、二胡、ギター)

     平方トーマス元 (ピアノ、コーラス)

【場所】千葉県銚子市妙見町1465 (銚子駅から徒歩5分) tel 0479-022-0650

    ※お車の場合は臨時駐車場をご利用ください

【時間】午後6:00

【料金】無料

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■2012年5月12日(土) 芳晴ライブ@新小岩chippy

【出演】 芳晴 (歌、ギター、二胡 他)

     平方トーマス元 (ピアノ、歌)

【時間】①20:00 ②21:00 ③22:00 

【料金】music charge ¥2000(入れ替えなし)

【場所】サウンド・ミュージックバーCHIPPY

東京都江戸川区松島3-15-10 2F  Tel 03-3653-1253

 総武線新小岩駅からアーケード商店街をまっすぐ、徒歩10分。

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