9 ドラえもんのポケット、役に立つ
「いやあ、もう大変だったよ」と笑う。
なんだかんだで、シモシュと今年会うのはこれが最初である。
つい先日引っ越したばかり。
まだ完全には整理がついていないスタジオの中に、ど~んとスタインウェイが置いてある。
そこは飯能市の郊外にあり、元は工場だったところをこつこつと改装したそうである。
とにかく、あれよあれよという間に事務所&スタジオの移転が決まり、あわただしく引越し&改装して最初のレコーディングだったというわけだ。
「二胡の他に、何か和ものの楽器を持ってきてくれない?三味線とかの類の」
「ほう…琵琶ならあるけど…バンジョーなんかどう?」
「いやいや琵琶がいい」
なんて会話を2日前にした。
今回は二本松はじめさんというシンガーソングライターのアルバムで、僕は参加は2回目。とにかく今回はなかなか意気込みを感じる。
レコーディングは順調に進み、二胡の感動的なフレーズ、コーラスを取り終えて、次は琵琶!といっても薩摩琵琶とか筑前琵琶ではなく、中国琵琶。
これは竹のフレットが半音感覚でついており、ギターに似た感覚で弾ける。
ジャンカジャンカ。
沖縄のエイサー風の元気なサウンドが出来上がった。
「さて、次は、この間奏なんだけど」
ロックンロール風の曲だ。
僕はウェストポーチを探る。
あ、あった!
カズー。
これは、口で吹く楽器だが、笛ではない。そう、歌を吹き込むのだ。
僕はブロンクスあたりの(知らないくせに)サックスプレイヤーになったつもりで、アドリブを吹きまくる。
「さて、次は、この間奏なんだけど」
君に会えてよかったよ、というバラード。
僕はウェストポーチを探る。
あ、あった!
ティンホイッスル。
これは、口で吹く楽器で、笛である(当たり前)
リコーダーに似ているが、音は少し味があって、イギリス北部の民族音楽が似合う。
僕はスコットランドに沈む麦畑で吹いているつもりで、ティンホイッスルを奏でた。
ちなみに、これが初めてのティンホイッスルのレコーディング、どきどき。
今日のレコーディングでは、4つの楽器とコーラスを吹き込んだことになる。
いやあ、楽しかった。
音楽万歳!